平岡研究室では分子自己集合に関する研究を行っています。

分子自己集合とは

 分子自己集合は、構成要素となる分子が自発的に集合し、ある秩序立っと構造体を形成する現象で、自然界ではDNAの二重らせんの形成、細胞膜の要素である脂質が集合化して作る脂質二重膜などが自己集合体です。また、タンパク質の折りたたみや折たたまった構造がさらに集合化する現象も自己集合です。ウイルスの殻構造 (カプシド) は数種類ものタンパク質が複雑に自己集合して作られた構造です。一方、1990年代から、分子自己集合体を人工的に作る試みが始まり、これまでに沢山の人工自己集合体が作られています。自然界に見られる自己集合も人工系の自己集合も、構成要素が自発的に集まりある1つの構造を形成する仕掛けが必要で、最終構造をへ導く主な情報は構成要素に中に組み込まれています。具体的にその情報とは、構成要素間に働く分子間相互作用と言われる普通の化学結合 (共有結合) よりも弱い結合で、これを構成要素の中へどのような空間配置で織り込むかで最終構造が決定します。また、自己集合を行う環境も構造体の決定を左右する重要な因子で、実際には、構成要素に組み込まれた情報だけでなく、構成要素外の物質によっても自己集合が支配されています。

分子自己集合の魅力

 自然界が自己集合をうまく取り入れているには、それなりの理由が存在します。ある物質を作る場合、原子と原子の間に化学結合を作り組み立てていかなければなりません。実際、生命活動を司る全ての分子が化学結合を介して作られていますが、とても大きな構造体を作る場合、全てを共有結合で作ろうとすると、大変な労力がかかることと、もし間違って結合を形成してしまうと、修復も大変になってしまいます。一方、自己集合では小さな構成要素を用意すれば、これらが自発的に集まり、構造体を形成するためにかかる労力は小さい構成要素を作るために必要な分で済みます。また、分子自己集合で使われる分子間相互作用は可逆なため、一度間違って結合を形成してしまっても、これを元に戻して正しい集合体へ導くことができるために、とても高い効率で大きな構造体を作り上げることが可能です。このような利点から、分子自己集合は生命系のみならず、物質の合成手法としても利用されています。