わずかな構造変化が引き起こす相互貫入かご状自己集合体の異なる反応性に関する論文(#111)を発表しました。
発表論文:Transformable quadruply interpenetrated cage with multiple states of different reactivities. T. Abe et al. Chem DOI: 10.1016/j.chempr.2025.102453, プレスリリース [Link]
タンパク質を構成するアミノ酸の一部を変えるとその機能が劇的に変化することがあることが知られています。また、類似の構造をもつタンパク質が全く異なる機能を示すことも知られています。これらの事実は、生命は進化の過程で、ある鍵となる分子に対して微妙な構造変化を通して、多様な機能を発現していることを示しています。このようなわずかな構造変化によって、どのように大きな機能の変化を導き出せるのかについては明らかにされていません。今回、我々は人工分子において、構造的にとても近い3種類の分子がそれぞれ全く異なる反応性を示すことを発見しました。基本となる構造は、相互換入かご状分子と呼ばれる2つのかご状分子が互いに貫入し合って作る分子です。この構造には3つのポケットが存在し、そこへ導入する陰イオンを変えることで3種類の構造が得られ、これらとルイス酸や銀イオンとの反応性が全く異なることが明らかになりました。また、これらの反応性の違いについて、ポケットの大きさと導入する陰イオンの大きさから算出した適合性の指標をもとに系統的に解釈できることもわかりました。