二面角の変化によって、2種類の大きな自己集合体を形成した論文(#110)を発表しました。

発表論文:Rational design of metal–organic cages to increase the number of components via dihedral angle control. T. Abe et al. Nat. Commun. DOI: 10.1038/s41467-024-50972-z, プレスリリース [Link]

自然界には、構成成分数の多い自己集合体が存在しますが、これらはエントロピー的に不利なため、熱力学支配によって形成するためには、エンタルピー的な利得がある必要があります。一方、速度論支配によって形成するためには、高い経路選択性が求められます。今回我々は、シス保護されたPd(II)錯体(M)と三座配位子(L)との自己集合によって、速度論支配によってM9L6三角錐三角柱プリズムが、熱力学支配によってM12L8二十面体が形成することを発見しました。今回用いたLと同一の配位方向をもつ三座配位子からはM6L4八面体が得られることが報告されており、同一の配位方向をもつ二種類の配位子から異なる構造を与える理由に興味がもたれます。両者の違いは二面角の違いのみであるため、二面角変化が自己集合体の歪みに影響を与える可能性を考え、これを幾何学解析する手法を開発し、3種類の集合体の内部に存在する部分環構造の歪みに及ぼす二面角の効果を調べました。その結果、M12L8二十面体の部分環構造は今回用いたLの二面角(37°)付近でほぼ歪みのない構造を取れることがわかりました。一方、M9L6三角錐三角柱プリズム内の部分三員環と四員環構造にはある程度の歪みが存在するため、準安定種として形成したことが明らかになりました。

 今回、準安定なM9L6三角錐三角柱プリズムがほぼ定量的に生成した事実は、高度の経路選択が働き速度論支配によりM9L6が形成したことを示しており、現在、経路選択の原理を明らかにする研究を進めています。

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