可逆な反応ネットワーク内における経路選択の原理に関する論文(#107)を発表しました。

発表論文:Pathway bias and emergence of quasi-irreversibility in reversible reaction networks : Extension of Curtin-Hammett principle. S. Takahashi et al. Chem 9, 1–12 (2023). [Link] プレスリリース [Link]

化学反応ネットワークは代謝や神経ネットワークなどにみられますが、ネットワークを構成する素反応間の関わりにより様々な機能を発現します。これらのネットワークの多くは素反応が不可逆なため、進行方向は予め決まっていることが多いですが、全ての素反応が可逆な反応ネットワークにおいて如何にその振る舞いが決まるのかは明らかにされていませんでした。今回、1つの可逆反応に2つの不可逆反応が繋がった系としてよく知られるCurtin-Hammett原理から出発し、全ての素反応を可逆にすると一過的にCurtin-Hammett原理の振る舞いをする状態(過渡的速度論状態)を作り出し、さらに接続する可逆反応を増やすことで、その寿命が大幅に伸びることがわかりました。さらに、素反応の数が250に及ぶ自己集合系について実験および理論により自己集合経路を調べた結果、素反応そのものとしては両方向に進みうると期待される過程が反応ネットワーク内に組み込まれると不可逆に振る舞い、この不可逆性の発現が自己集合における経路選択の鍵を握ることが明らかになりました。

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